ABAとは

ことばの遅れと自閉症

わが子のことばの遅れが気になっている親御さんへ。

 

1才半を過ぎても、ことばが出てこない。2才になっても、一握りの単語しか話さない。あるいは、ことばは出てきたが、いつまで経っても一方的で、会話にならない...。このようなことばの遅れが気になる場合、お子さんに何らかの障害がある可能性があります。

さらに目が合いにくい、気持ちが通じにくい、「見てみて」と大人の注意を引く行動が飛び強い、などの症状があったら、「自閉症」という障害を疑う必要があるでしょう。

「自閉症(自閉スペクトラム症)」とは、社会性の障害(人と心を通わせることが苦手)と、固執性(同じ散歩のルートに固執するなど)や常同性(物を並べるなど、単調な行動の反復)を特徴とする、発達障害(生まれながらの脳の障害)の一種です。約半数に知的な遅れを伴います。ことばの遅れが伴うケースも多く、一生ことばが出ないこともあります。

単なる知的な遅れ(知的障害)の場合は社会性があるので、集団の中でも過ごしやすいのに対して、自閉症の場合は、社会性の障害も加わるため、集団行動がとれない、先生の指示が聞けない、といった問題が起こります。思い通りにならないときの激しいかんしゃくや、他害、自傷といった問題行動が伴うことも多いです。

自閉症治療法としてのABA

自閉症は、かつては治療困難とされていました。しかし近年の海外の研究で、ABA(応用行動分析)という方法が、自閉症の治療に有効であることが分かってきました。

ABAとは科学的に解明された、人間一般に共通する行動や学習の基本原理を、障害児の治療教育に応用するものです。望ましい行動に対しては、ほめるなどのほうびを与えることによって伸ばし(これを「強化」と言います)、困った行動に対しては、何がほうびになっているかを見つけ(例えば周囲の注目)、それを与えないことによって減らす(これを「消去」と言います)ことを基本とします。

このABAを自閉症児の治療に適用して、最初に劇的な成果を挙げたのは、米UCLAのロバース博士(O.I.Lovaas, 1927-2010)です。

ロバース博士が1987年に発表した論文(1)によると、ロバース博士の研究チームは1970年から、2才から3才半の自閉症幼児19人に対して、ABAに基づく週40時間の1対1のセラピーを、2年以上にわたって施しました。ABAセラピーは、前半はもっぱら子どもの家庭で、学生セラピストと親によって行われ、後半はホームセラピーの時間を減らして、セラピストの付き添い付きで、徐々に健常児の集団に入れていきました。

その結果、子どもたちが小学校に入った時点で行われた追跡調査で、19人中9人(47%)が知的に正常になり、しかも付き添いなしで小学校普通学級に入学したことがわかったのです。

一方、比較のために用意された二つのグループ(一つは週10時間未満のABAしか施さなかった19人、もう一つは全くABAを施さなかった21人)では、知的に正常域に入り、しかも付き添いなしで普通学級に入った子は、40人中1人だけでした。

この研究は、集中的なABA療育を行なった群と行わなかった群とを長期に渡って比較し、前者が後者に比べて、統計上明らかな有効性があることを実証した点で、非常に高く評価されています。

 

その後、主にロバース博士のお弟子さんたちによって、さまざまに条件を変えて研究が繰り返された結果、ABAで、平均IQの15ポイント以上の増加や、10~50%の子どもの小学校普通学級への入学、といった顕著な改善結果を出すためには、おおむね週20~40時間のABA個別療育を行なう必要がある、ということがわかっています(もっとも、20時間以下なら効果がないか、というとそんなことはなく、つみきの会の研究では、一日1時間以上(平均70分程度)の親によるホームセラピーでも、平均13ポイントの発達指数の増加が得られています(2))。

1999年に、ニューヨーク州保健省が発行した自閉症幼児のための診断・治療ガイドラインでは、週20時間以上の1対1のABA療育が、ほとんど唯一改善効果を実証されている方法として、推奨されました。その後、ABAは全米に普及し、現在では全米すべての州で、ABAが医療保険の対象となっています。またカナダでは、ほとんどの州でABA早期療育が公費負担の対象となっています。

親がセラピストになる

ロバース博士が、治療時間とともに重視したのは、「家庭でセラピーを行なう」「親がセラピストになる」ということでした。

 

ロバース博士は1964年に自閉症児に対する早期集中療育の研究を始めましたが、最初は大学病院に子どもを入院させて、親から切り離したところでABAを行ないました。すると、子どもは改善したのですが、治療を終了して、子どもを元の環境(家庭など)に戻すと、せっかくABAで教えたことが失われることが分かりました。

 

ロバース博士は、これは自閉症児が一つの環境で学んだことを、他の環境で発揮することが苦手だからだろう、と考えました(般化の困難)。そこで、「それならば、最初から子どもの生活の場である家庭でセラピーをしたらいいだろう」と考えたのです。

 

また、自閉症児は治療を終了すると、教えたことを忘れてしまう(治療終了後の退行)という問題に対しては、親にABAを教えて、親自らがセラピストになってもらうことで克服しようと考えました。なぜなら、親は半永久的に子どもと一緒に生活しているので、ABAを長く続けることができるからです。

 

そこでロバース博士は、家庭に学生セラピストを派遣して、親とセラピストが共同でセラピーを行なう方式を採用しました。それが1987年に発表した画期的な成果につながったのです。​

 

つみきの会のABAホームセラピー
米国やカナダでは、州によっては、公費で、あるいは医療保険の安い自己負担額で、ABAセラピストによる、週10時間から多くて30時間程度のセラピーを子どもに受けさせることができます。

しかし残念ながら、まだ日本ではそのような制度がありません。最近になって、ABAもようやく普及してきて、ABAを掲げる児童発達支援事業所も増えてきましたが、そこで受けられるセラピーは、せいぜい週1,2回、一回1時間程度です。それでは、子どもを確実によくするためには不十分です。子どもを確実に伸ばすためには、幼児期に少なくとも1,2年の間、毎日1時間以上のABAセラピーをする必要があります。しかも、教えた成果を生活の中に定着させるためには、家庭で教えるのが一番なのです。

​そこでつみきの会では、ロバース博士に倣って、親が自らABAを学び、わが子にABAホームセラピーを行なうことをお勧めしています。

ABAセラピーを行なうことは、決して簡単なことではありません。しかし詳しいテキストを読み、解説ビデオを見て学べば、素人の親御さんでも、充分、実施することができます。しかも、週に1,2回、療育の教室に通わせて、そこで個別指導を1時間程度受けさせるより、毎日、親が教えた方が、はるかに確実に、子どもを伸ばすことができるのです。

つみきの会は、自らわが子のセラピストとなって、自宅でABAホームセラピーに取り組む親御さんを支援する会です。

ABAホームセラピーを実施するための詳しいマニュアル「つみきBOOK」や、付属DVDを会員向けに販売しています。

また各地で開催している定例会や発達相談では、藤坂代表による個別指導を受けたり、見学することができます。

また、つみきの会が独自に育成したABAセラピストによる、訪問セラピーや訪問コンサルティング、あるいは遠方の場合はWEBコンサルティングを提供しています(訪問セラピーは大都市圏に限ります。またセラピストの数に限りがあるので、入会されても必ずご訪問できるとはお約束できないので、ご了承ください。セラピストの訪問が受けられない場合は、訪問ないしWEBによるコンサルティングサービスをご利用ください)。

毎年、全国から多くの親御さんが入会され、励まし合いながら、困難を乗り越え、わが子にABAホームセラピーを実施しています。皆さんも、ぜひつみきの会に入会して、お子さんのABAセラピストになってあげて下さい。

引用文献

(1)Lovaas, O.I. (1987) Behavioral treatment and normal educational and intellectual functioning in young autistic children, Journal of  Consulting and Clinical Psychology, 55,1,3-9.

(2)藤坂龍司 (2011)「ABAによる親を介した早期療育の成果-つみきの会の活動-」乳幼児医学・心理学研究20(2):102-107.