えっくんが良くなる日まで

第一回(渡米そして療育)

 わが息子えっくんが自閉症と診断されたのは平成13年の5月、彼はまだ2歳8ヶ月 軽度の自閉症から半年後には中度の精神遅滞を伴う典型的自閉症と診断され あれから一年と4ヶ月が経ちます。

 あの日から我が家ではいろいろなことがありました。 障害者への理解、世間への反感、日本での療育のあり方、たくさんの人との出会い、つみきの会で知った本当の療育、両親との別れ、度重なる引越し そして渡米。 たった一年と4ヶ月とは思えない日々をすごして、現在カリフォルニア州、にて療育をうけています。

 今現在彼が受けているサービスはリージョナルセンター(国からの援助で成りたっている非営利団体)からと学校区からの援助でインホームケア(自宅での療育)を受けています。 どちらも子供の様子を時間をかけて評価し、訓練が必要と判断された子供に提供されるサービスです。 学校側からのサービスの提供もIEP(個別教育計画)が終わってからとなります。 IEPのミーティング前に30〜50日間かけてアセスメント(評価)をします。 ですから息子の本格的な療育も最近始まったばかりです。

 私がこちらにきておどろいたのは、このようなサービスはあってあたりまえだという こちらの考えで、日本での療育の遅れを目のあたりにしています。 但し、このようなサービスは州によって、地域によって、学校区によって、また子供の様子や親の希望によってだいぶ異なってきます。 ですからアメリカに在住してAutism(自閉症)と診断されても、すぐにこのサービスが受けられるわけではないので、親は自ら学校に出向き学校区と交渉したり、リージョナルセンターに申し出て少しでも多くのサービスをもらおうと必死です。中には裁判をしたりしてそのサービスを勝ち取ろうとする親もいます。しかしながら日本にはまだその勝ち取れるサービスすらない現状なので、国が見直す必要があると思います。

 さて息子えっくんは現在特別学級のプリスクールに毎日スクールバスで通っております。 朝7時10分にはバスにのり12時45分に帰宅します。 このクラスは自閉症児専門で現在6人の生徒に先生が一人、介助が5人いらっしゃいます。スケジュールが組まれていて、サークルタイム、プレイタイム、ABA(1時間45分)、ランチタイム、このほかに週2回の言語療法、OT、PEがIEPにそって行われます。また学校で感覚統合や聴覚統合も取り入れています。

では少し、自宅でのセラピーの模様をご紹介いたします。

基本となる目合わせ、これは秒刻みでカウントします。 最初は2秒あったら良しとします。 現在では5秒近く目が合うようになりました。
  1. 座っての指示、最初は椅子の前に立たせて座ってといって座らせていましたが、 現在は椅子から離れていても座っての指示で座るようになりました。
  2. マッチングは比較的、得意分野です。 これは簡単なパズルから大好きなレゴの人形を写真にとり手作りパズルや絵カードをつかって、マッチングが上手になりました。 今は2次元と3次元のマッチングができます。
  3. Do this! (こうやって)と動作模倣です。 行動療法を始めて8ヶ月間くらいこの動作模倣でつまずいておりましたが、 物を使っての模倣(主に積み木を使っての模倣)がはいってから、2ヶ月くらいで動作模倣ができるようになりました。 これも大好きなレゴの人形を強化子(ご褒美)に使って Do this と指示をだして、パチッと手を一回たたく動作を何度もプロンプト(介助)しながらやりました。できなくてもほめる、絶対にダメという言葉を使わず、 セラピストさんはかならず、Try better と言います。 初めて模倣ができたとき高かったハードルを一つ飛んだような気持ちでした。 今はDo this and this と二つの動作模倣をさせています。
  4. 音声模倣 ママと言って、というとママといいます。 ここまでは本当に難関の道のりでした。 初めて彼の言葉を聞いたのは彼が生まれて3年と10ヶ月がたっていました。 動作模倣ができて間もなく音声模倣ができるようになりました。 動作模倣の訓練にOral Imitation (口を使った模倣)を何度もしていました。 ジュースと言えなかったら、ジ・ウー・スとくずして言わせています。
  5. サイン言語、息子はモア(もっと)、プリーズ(お願い)、オープン(開けて) アイ(私)、ウォント(ほしい)、ドリンクと幾つかのサイン言語ができます。 最初のころはこのサイン言語だけでしたが、今ではちゃんと言葉もそえていえるようになりました。サイン言語だけをしめしたときもちゃんとセラピストさんは おはなしが上手ねと褒めます。GOOD TALKING!!! 

他にもまだまだ課題は豊富にあります。 この課題とセラピーがどのように行われ息子がどのように成長していくか また皆様にご報告したいと思います。