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とぅるママの体験

 「こういう子(自閉児)はグッと伸びることはありませんので…」
今年の4月、息子2歳2ヶ月の時に医師に言われた言葉です。ちょうどABAを始め た頃のことでした。
しかしその4ヶ月半後、同じ医師から「もしかしたら今後伸びるかもしれません ね…」と言ってもらうことができました。
現在息子は2歳9ヶ月になりました。ABAを始めた頃は動作模倣もほとんどなく、 エコーにも乏しく、有意味言語は「わんわん」「まんま」だけ、音声指示も状況から 判断しているだけという状態でしたが、現在はつたないものの、2語文がいくつか出 てくるようになりました。おむつもあっさりとれ、遊びの幅も広がりました。よく会 う近所のお友達は見分けて「○○くん」と言うことができます。。入浴後寝る前には 「ほん、よんで」と日課の絵本読みをせがみます。
来年は保育園に入園する予定ですが(加配をつけてもらうつもりでいます)、まだま だ発達の遅れは大きく、課題はたくさんあります。むしろ大変なのはこれからかもし れません。でもABA中心の療育方針が定まっているので、そういった面での不安は ありません。
前述の医師の言葉から私自身気持ちに一区切りついたので、今までを振り返ってみた いと思います。

平成11年2月、息子は我が家の待望の第1子として産まれてきました。安産でし た。
赤ちゃん時代はよく泣く、手のかかる子でしたが、ゆっくりペースながら発達のポイ ントは抑えていた(微笑もあったし、人見知り・後追いもちゃんとあった)ので、個 人差なのだと思い、あまり心配はしていませんでした。
ただ、保健センターの3・4ヶ月健診で、保健婦さんが鳴らす鈴の音にあまり反応し なかったため、後まで残されたことがありました(結局、家では反応していたので、
問題なしということになりましたが)。今思うと、自閉的な症状の前兆だったのかも しれません。
息子が他の子と少し違うなと感じ始めたのは、はいはいを始めた頃だったと思いま す。
この時期は好奇心旺盛で探索行動が盛んになると聞いていたし、実際同じくらい の月齢の他の子はそうだったのですが、息子はグズグズ言っては私にベタベタ寄って くることが多く、あまり1人遊びのできない子でした。私は、興味の幅の狭い、依存 心の強い子だなあと感じていました。
また、真似やバイバイなどの芸もできませんでした。真似は10ヶ月頃に、首を傾げ るのと舌をベーッと出すのと2種類だけやっていたのを覚えていますが、1歳過ぎに はその2つさえもしなくなっていました。

当然指差しは全くしませんでしたし、言葉も全く出ませんでした。「ばっばっばっ ばっ…」といった喃語はよく出ていました。食べ物が欲しい時に「まんまんまんま ん…」とよく言っていたのが、唯一意味のある前言語のようなものでした。
当時の私は呑気で、おまけにテンションの低い母親(子供は放っておいても育つもの だと思っていた)だったので、息子の弱いところを意識して働きかけるわけでもな く、成長すればそのうち興味の幅も広がるだろう、言葉も出るだろう、とただ自発を 待つだけでした。
1歳4ヶ月近くなって、息子はようやく1人歩きを始めました。行動範囲が広がった せいか、一見興味の幅が広がったように見え、グズグズの頻度も少し減りました。
が、興味の向く方向が他の子とは少し違っていました。
側溝の金網、マンホールのふた(1つ1つチェックするように踏んでいました)、道 路の「止まれ」などの白文字(なぞるように歩いていました)、道路の色の変わり目 の部分(行ったり来たりしていました)、のれんなど上からぶら下がっているもの、 看板(必ず裏側を確認していました)…。友達のお母さんからは「面白いねー」と言 われていました。
また、この頃から自分で歩く場合には同じコースをたどることが多かったように思い ます(当時の私は、ちゃんと道順を覚えててえらいなどと思っていました…)。コー スの途中に興味を引くものがあると、行ったり来たりしたり、裏側を確認したり、い つも同じことをしていました。
おもちゃなどでの遊び方も、ひたすら口に持っていくだけという状態で、広がりがあ りませんでした。積み木も口に持っていくだけであとはポイと捨ててしまう、当時 買った絵本はかじられて端の数センチが溶けていましたし、砂場に行っても砂や石を 口に入れるだけなので危なっかしくて見ていられませんでした。
そんな状態で受けた1才半健診断は予想通りさんざんなものでした。課題は何ひとつ できず、人見知りも激しかった息子は、知らない人の前に座っていることも苦痛なよ うで、すぐに椅子から下りようとしていました。当然後まで残され、保健センターで 月1回行われている教室に誘われました。これで息子も少しは変わるかもしれないと 期待し、翌月から参加することにしました。

その教室には、1才半から入園前までの子供が20人程参加していました。言葉の遅 れやかんしゃくなど、発達上何らかの心配を抱えている子供が来ていたのですが、一 番年下であることを差し引いても、息子はその中で明らかに浮いていました。おも ちゃでほとんど遊ばずに、ただ部屋の中をウロウロと歩きまわってばかりで、それに 飽きると部屋の外に出たがって泣いていました。最初の3回は泣いてばかりいまし た。
現実をつきつけられたのと、本当に息子のためになっているのだろうかと疑問に 思う気持ちで、私自身もとてもつらい時間でした。幸い4回目からは泣かずに時間を 過ごせるようにはなったのですが、ただ集まって自由遊びをするだけの内容、月1回 という回数では、当初私が期待した何らかの効果が出るはずもなく、このままでよい のだろうかと次第に焦りを感じるようになりました。
そんな時、その教室に通っているお母さんから、発達センターで行われている教室の ことを教えてもらいました。発達上何らかの心配を抱えている子供のための教室とい う点では同じなのですが、週1回(2才児になると週2回)で、スケジュールがちゃ んと決まっていてトイレトレーニングなども教えてもらえると聞いて、早速直接セン ターに電話し、相談員との面談の予約をしました。
ちょうどその頃、保健センターの教室で1人の初対面のお母さんと話をしました。そ のお母さんには4人のお子さんがいて、そのうち2人が自閉症とのことでした。その お母さんに帰り際に突然「こんなこと言ったら気を悪くするかもしれないけど、発達 センター(の診療所)に行った方がいいと思う」と言われました。発達センターの診 療所には児童精神科があるので、そこで息子を診てもらった方がいいという意味でし た。
当時息子は1歳11ヶ月、発達の遅れは痛感していましたが、それが障害からくる ものだとは思いもしていなかったので、言葉では言い表せない程のショックを受けま した。

それから、インターネットで自閉症についてのHPを片っ端から調べました。。症状 を1つ1つ息子と照らし合わせては、「大丈夫、息子は障害などではない」「やはり 息子は自閉症かもしれない」と一喜一憂する日が続きました。そして出した結論は 「おそらく息子は自閉症スペクトルのどこかに属するだろう」というものでした。

ど の親御さんもそうだと思いますが、息子に障害があるということを受け入れるのはと てもつらいことでした。息子の寝顔を見ながら、申し訳なくて「ごめんね、ごめん ね」と言いながら何日も泣きました。
少し落ち着いてから、主人に息子のことを話しました。主人もやはり最初は信じられ ないようでしたが、私の深刻な様子(体調も崩していました)と、プリントアウトし たHPの束を読んで、理解してくれたようでした。仕事が忙しく、普段はねぎらいの 言葉などかけてくれない人ですが、「1人で抱え込まなくていいから」「仕事より家 族の方が大事なのは当然」と言ってくれました。無骨な言葉ですが、当時の私には唯 一の救いといえるものでした。

それから私が考えたのは、息子に障害があるのは仕方がないことだけれども、少しで も伸ばせるところは伸ばして、息子自身がが生活しやすいようにしてあげたい、とい うことでした。療育の方針を見付けたいと思いました。それにはまず医師に診てもら うことが必要だと考えました。その時は、医師が療育の方向を示してくれるものだと 思っていました。
息子が2歳の誕生日を迎えた今年2月、発達センターの相談員との面談の際に、教室 への申し込みと同時に児童精神科の受診の予約をしました。何と9ヶ月待ちとのこと でした。小児神経科だと2ヶ月半後に診てもらえるということだったので、併せて予 約をしました。
2ヶ月半後の診察を待っているのももどかしく感じていた私は、その間にもいくつか の病院で診察を受けました。しかし、時間をかけて行ったにもかかわらず、思ったよ うな結果は得られませんでした。告知の問題からでしょうか、医師は初診でははっき りしたことは何も言ってくれません。療育についても、子供に対する接し方を簡単に 説明してくれるだけです。

次第に私は、療育の方針は親が自分で子供に合った、納得できるものを見付けなけれ ばならないことに気付き始めました。再度インターネットで、今度は療育について調 べ始めました。そんな中出会ったのがつみきの会のHPでした。

早期集中介入のペー ジを読んで「これだ!」と思いました。ABAにたどりつく前に太田ステージについ て書かれているHPを読み、本も購入したのですが、動作模倣が課題として挙げられ ていても動作模倣ができない子供にどのようにして動作模倣を教えたらよいかまでは わからず、行き詰まりを感じていたところだったのです。言葉を獲得するためのプロ セスも、私には一番わかりやすく感じたというのもありました。

しばらくしてから、自宅で1対1のレッスンを始めました。息子は2歳2ヶ月になっ ていました。1日2〜3時間、週15〜20時間が精一杯で、週40時間などとても無理な 状況でしたが、できるだけのことはやってみようという思いで始めました。
もともとこだわりやかんしゃくがあまりなく、母子密着型の子だったので、椅子に 座ったり目を合わせたりといったレッスンの導入自体は割とスムーズにいきました。
ただ、動作模倣にはかなりてこずりました。一般的に自閉児は聴覚認知が弱いといい ますが、息子は赤ちゃんの頃から歌が好きだったり(泣いていても童謡を歌ってあげ ると泣き止みました)、手遊び歌が好きだったり(真似はできなかったので、私の両 手の親指をつかんで一緒にやるという形でしたが)したせいか、音の刺激もあった方 が理解しやすいようでした。アドバイスもあって、まず音声指示を交えた動作模倣か ら入り、その動作をマスターした後で純粋な音声指示と動作模倣とに分解するという 方法をとって、何とか動作模倣も少しずつできるようになりました。

もともとレッスンの時間数が少ない上に、私が2人目を妊娠し、つわりの最中はさら にレッスンの時間が減ってしまったため、レッスンの進み具合もとてもゆっくりなも のでしたが、それでも着実に息子の認知力がついていくのが分かりました。音声模倣 と名前付けのレッスンが進むに従って、徐々に単語が出てくるようになりました。発 音も回数を重ねるごとに段々よくなっていくのが分かります。私の話しかけに対する 反応もよくなってきました。
自発を待っていた1歳代の頃には全く見られなかった変 化でした。そして何よりの収穫は、言葉をコミュニケーションの手段として使うこと を身に付けたことだと思っています。もちろんまだまだ本当につたなく、パターンで しか覚えられない状態ですが、知っている物を見かけると私の方を向いてその名前を 言ってみたり、要求などを知っている数少ない言葉で一生懸命伝えようとしている姿 を見ると、ABAを始めてよかったと心から思います。
主人はレッスンには参加していませんが、休みの日に私が息子に接している様子や レッスンの様子をさりげなく観察しているようで、自分なりのやり方で息子に色々教 えてくれているようです。欲を言えばレッスンを分担してできればいいなとは思うの ですが、違うやり方も息子にとっては般化になるだろうということで、主人に任せて います。

ABAのレッスンを始めて間もなく、発達センターの小児神経科を受診しました。自閉児をたくさん診ているというその医師は、私が息子が障害があることを既に受け入 れていることを理解してくれて、初診でしたが「自閉症の可能性が高い」とはっきり 言ってくれました(冒頭の言葉は、この医師の言葉です)。
まだ全体的に幼い印象が 強いということで、OT(作業療法)の訓練を週に1回受けることになりました。感 覚統合を中心として受け入れられる感覚を増やすこと(息子には感覚防衛とまではい かないのですが、馴染みの感覚だけでパターンを作ってしまう傾向がありました) と、両親以外の人(OTの先生)とやりとりができるようになることが目的でした。
訓練中は、基本的には先生と息子だけでやりとりをし、私は部屋の隅で見ているとい う形です。両親以外の人間には触わられるのも嫌がる状態だった息子は、最初はよく 泣いて私の所に逃げてきました。遊べる遊具も本当に限られていました。半年経った 現在は、先生がとても忍耐強く接してくれたおかげで、時間中私の所へ逃げ込んでく ることもほとんどなくなり、受け入れられる感覚も大分増え、連続した動作もできる ようになりました。
先生のことも大好きな様子です。

ABAとOTの他に療育として始めたことについても書いておきたいと思います。
まず、前述の発達センターの教室に2月から週1回、4月からは2歳児クラスに上 がったので週2回通い始めました。この教室の時も最初の3回くらいは泣いてばかり いましたが、スケジュールが決まっていることや通う回数が多いこともあって、割と 早く慣れることができました。この教室では、トランポリンなどの感覚統合の遊具も あることから、感覚統合を意識した働きかけを意識したり、ABAのレッスンで行っ たことの般化、逆にレッスンの課題を見付けたり、教室で興味を持ったおもちゃや遊
びを家でも取り入れて遊びの幅を広げること、そして数多くの人と接することによっ て社会性をつけることを目的としています。以前は他の子には興味がない様子でした が、今では友達と一緒に遊具で遊ぶことを楽しめるようになりました。

5月からは音楽教室(2歳児対象)とスイミングにも通い始めました。
音楽教室は、息子が音楽好きだということと、子供が10人前後の小人数のクラスで、ある程度環境が構造化されていることから選びました(その前にリトミックにも 少し通ったことがあるのですが、公民館内の体育館という広い場所で、人数もかなり 多くて息子は注意散漫になってしまい、あまり効果がありませんでした。注意力をつ けるにはやはり最初は小人数で環境が構造化されている方がよいと思います)。
好き な音楽を通してできることを増やすこと、健常児の中に入れて刺激を与える(私自身 も健常児がどの程度色々なことができるのか知りたかった)というのが目的です。
最 初押さえつけてみんなと同じことをさせるのは大変でしたが(周りはとてもこわい母 親だと思っていたことでしょう…)、スケジュールを理解した今は驚くほど楽になり ました。簡単な楽器の演奏(タンバリン、たいこ、カスタネットなど)もできるよう になり、家でも楽しんでやっています。
スイミングは感覚統合にもよいということと、体力をつけるのが目的でした。

今は親 子で入るクラス(主人が入れています)なので準備体操や水の中での体操の時間が長 いのですが、すぐにプールが大好きになった息子は、スイミングでの体操を家で真似 したりするようになりました。意外なところで動作模倣の練習になりました。
その他、日常生活で特に意識して取り組んだのは、歩くことと絵本の読み聞かせでし た。
発達センターの教室に通い始めた頃、活動として散歩がよく組まれていたのですが、 息子はすぐ抱っこをせがんでなかなか自分で歩こうとしなかったし、手をつなぐのも あまり好きではありませんでした。
家でも同じ調子だったので、このままでは体力が つかないと思い、ある掲示板で相談して、外では一切抱っこして歩かないようにしま
した。最初の数日間は抱っこをせがんで泣いていましたが、思ったよりあっさり歩く ようになり、同時に手をつなぐのも嫌がらなくなりました。
現在も外で抱っこをせが んできた時はその場で立ち止まって抱っこをしてあげますが、抱っこをして移動しな いようにしています。

最近息子は体力がついてきたのが目に見えてわかるのですが、 歩く量が増えたことの効果も大きかったと考えています。
絵本については、2歳過ぎまで全く関心がなかったのですが(前述のように、1歳代 に買った絵本はかじるだけのものでした)、ある1冊の本に息子自身ハマったのを きっかけに、 絵本を見てくれるようになりました。
まだ簡単な1〜2歳向きの絵本が ほとんどで、ストーリー性の強いものはよくわからないようなのですが、お気に入り の絵本は着実に増えています。お気に入りの絵本は始終読んでくれとせがむので正直 面倒な気持ちもありますが、できるだけ根気強く相手をするようにしています。
ABAのレッスンで覚えた物や動作の般化にもなると思っています。毎日入浴後寝る前に は絵本読みの時間と決めて、3冊程の絵本を読むようにしています。
また、休日にはできるだけ外出し、息子に色々な経験をさせるよう心がけています。
感覚統合によい遊具の沢山ある児童センターや、沢山の種類の遊具があって動物もい る大きな公園に遠出したり、電車を使って出かけてみたりして、息子に色々な経験を させるようにしています。公園の遊具などは息子には出来なかったり、興味を示さな いものも多かったのですが、スモールステップで少しずつでもできるように根気強く 働きかけました。その成果か、遊べる遊具の種類がグンと増えました。また遊び方 も、他の子がやっているのに刺激を受けて自分もやってみる、といったことも増えて きたように思います。

以上のようにABAの他にも療育として意識して行っていることもいくつかあるので すが、やはり息子にとってABAは療育の中心だと考えています。ABAをやってい なければ他の療育の効果もそれほど上がらなかったのではないかと思っています。
息子は最近少しずつですが、レッスン以外の日常生活の中で教えたことを覚えて使 う、といったことも増えてきました。これもABAのレッスンで学ぶことの基本がで きたからではないかと思っています。
しかし、伸びたとはいってもまだまだ息子は発達の遅れがかなり大きいのが現状で す。
今後も私自身勉強を続けて、ABA中心の療育を根気強く行っていきたいと思い ます。

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