えっくんが良くなる日まで

第3回 その後

  第1回目のレポートから約4ヶ月が経ちました。4ヶ月前の息子はやっと言葉がいくつか出てサイン言語で要求ができるという報告をしました。4ヶ月経った現在、息子がどの様にかわり、毎日のセラピーの様子とともにご紹介していきたいと思います。


 セラピストさんがドアのベルをならします。えっくんは日によってとっても喜んでセラピストさんに抱きつく時と、私の手を握ってドアを開けないで・・・とだだをこねるときがあります。

 しかし一度セラピストさんが中に入ってくると、普段こだわりで持っているおもちゃをかばんにいれます。するとえっくんは2階にある自分の部屋へと走ってあがり、ちゃんと席についています。

目あわせ−

 セラピーの最初はだいたいこの目あわせの訓練から始まります。

「こっちを見て」1・2・3・・・・

 こうして訓練しているうちに、どこから指示をいれてもこちらを見るようになりました。意識をして人と目をあわせるようになりました。目を合わせる時間が長くなった事で次に出される指示も通りやすくなりました。現在は名前をよばれて、見る事ができます。

 そして他の指示が通らないときはまずこの「こっち見て」に戻り目を合わせて違う指示をいれます。

−座る−

 「座って」は初歩でマスターしなければならない課題の一つだと思います。
食べるときやテレビを見るとき「座って」の指示が通るととてもやり易いです。
 病院の待合室でも短い時間でも座る事ができたら、褒めてあげましょう。
また息子がいたずらをしたりしたときも「座って」と指示をいれてやめさせたりします。

 座ったら褒められる、これの繰り返しで1秒から10秒、一分から10分と長く座れるようになれます。

 さてこのような基本的なことができるようになった息子は現在、このような課題にとりくんでいます。

  • 目あわせの練習

  • つみきの模倣

  • 物を種類別に分ける

  • 何と何が属しているかを写真を使って教える

  • マッチング

  • 色を教える

  • 微細運動

  • 自分の名前をマッチングで教える

  • 動作模倣「こうやって」

  • 指示をいれての動作模倣

  • 音声模倣

  • 物を使っての模倣

  • PECSの訓練

  • 遊びを教える

  • 物の名前づけ

  • 自助スキル

  • 待つ事

  • イエスとノー

 このような課題をいかに楽しく進めていくか、順を追ってご紹介いたします。

−つみきの模倣−

 初期ではセラピストさんが2から3つのつみきを積んだりいろいろな形を作り、「こうやって」と指示を出して、つみきの模倣をしていました。

 今では6つ以上のつみきの模倣と4つ以上のつみきを写真に取りそれを見せて「こうやって」といって息子が写真どおりに作るという訓練をしております。

物を種類別に分ける

 動物、乗り物、食べ物、食器、家具などの小さめのおもちゃを使います。

 ばらばらにおいたおもちゃを「分けて」と指示をいれてお皿や箱などに分けていきます。最初はプロンプトして褒めてください。

 マッチングなどが得意な子は結構簡単にできるかもしれません。
種類に分けたら、かならずその名前をいいましょう。

何と何が属しているかを
写真を使っての訓練

 写真で例えばかさと長靴、ソックスとくつ、というように属すものを教えます。最初は見慣れたものや、子供が使っているものでやると入りやすいです。

−マッチング−

 3次元同士のマッチングから2次元同士のマッチングへ。さらに3次元のものと2次元のものとのマッチングと進めていきます。指示は「どれが同じ?」とか「同じものをおいて」などで、これは得意分野ですのが、たくさんさせて、成功率を高め、自信をつけさせるため、また集中力の強化などにできることでも毎回させています。

−色を教える−

 黄色いものを一つ机の上において「黄色ちょうだい」と指示を入れます。最初はプロンプトして取らせ、褒めます。色を教えはじめるときには、かならず他の課題中やセラピー以外の場でも「これ何色」と聞きプロンプトして「黄色」などと言わせます。

 息子は現在黄色と青がわかる様になりました。

−微細運動−

 これに関しては次回の感覚やOTについてで詳しく紹介いたします。

−自分の名前をマッチングでおしえる−

 まず本人の写真を用意します。えっくんなら え・っ・く・ん と文字のマッチングからはじめます。指示はマッチングの時と同じで、できたら褒めて、指差しをさせて「えっくん」と言わせます。

 これは始めたばかりなので、いずれまたご報告いたします。

−動作模倣「こうやって」−

 初期のころはなかなかこれにつまずいていましたが、「こうやって」の意味が分かってからはいろいろな事ができるようになりました。

 この動作模倣はこれから先いろいろなところで使えますのでぜひマスターしてください。

−指示を入れての動作模倣−

 最初の動作模倣は「こうやって」ですが、つぎは「両手を上げて」「手をたたいて」のような指示をいれての動作模倣をさせます。できなければ、かならずプロンプトして褒めます。

−音声模倣−

 初期のころは口の周りの模倣から簡単な単語を訓練しました。現在も発音がわるいので訓練中です。

−物を使っての模倣−

 クレヨンでセラピストさんが丸を書いて「こうして」と指示をだします。えっくんが真似して丸を書きます。
 また粘土で丸を作って「こうして」と指示をだします。

 このような訓練で、顔を書くようになりました。

−音声指示−

 毎日同じようなことを繰り返し言われてプロンプトされていると段々といわれた事がプロンプトなしで指示が通ってきます。

 「座って」もそうですが、先日このようなことがありました。
 初めて歯医者に連れて行ったときのことです。大好きなお絵かきセットを持参して、待合室で絵を描かせて「絵上手ね」「いい子でよく待ってるね」、とさんざん褒めまくりました。

 そして先生に呼ばれて、「えっくん座って」で座り、「横になって」で横になりました。

 そして「口を開けて」と指示をしてわからなかったので、「こうして」といって動作模倣をさせ、すばやく先生が歯を見て終了です。

 このような指示が通り般化されるとパニックも少なく物事が済むようになりました。

−トイレトレーニング−

 セラピストさんと学校と家庭が協力しあって、トイレトレーニングを始めました。

 最初はトイレにも座る事ができませんでした。まずは写真やPECSでトイレに行くと指示をします。この時、セラピストさんはありとあらゆるおもちゃをもっていきます。もちろん水分は事前にいっぱい補給します。

セラピストさん 息子  セラピストさん
「ドアを開けて」  あける 「やったあ」
「電気をつけて」  つける  「すご〜い」
「ズボン脱いで」 脱ぐ(半分) 「上手」
「パンツも脱いで」 脱ぐ 褒める
「座って」 トイレに座る 思いっきり褒めまくる
「おしっこしてごらん」 ・・・・

    セラピストさんはここで持参した おもちゃや楽器を使って歌を歌ったり、 数を数えたりします。

  時には、コップに水を用意しておいて、 おしっこと同じように便器に流します。

 ここでタイミングよくおしっこをしたら、セラピストさんは飛んだり跳ねたりして褒めます。そして同じように指示をだして手を洗って終了です。できなくても褒めます。もちろん一瞬でも便器に座ったら褒めまくります。

 いまのところ自分からトイレとは意思表示ができないのですが、毎回連れて行くとちゃんとトイレでできるようになりました。

 とにかくトイレに行くとセラピストさんがもっと面白くなることでトイレを嫌がることなくできるようになってきました。

−イエス、ノーを教える−

 この課題はまだはじめたばかりですが、
 まず、大好きなお菓子ときらいな長ネギを用意しました。
 そしてセラピストさんに「これほしい?」と聞かれて御菓子だと息子は手を出します。その時プロンプトされてイエスといって首を立てに振ります。

 また長ネギのときにはノーと言わせて、首を横にふらせる訓練をしています。

(般化)要求をしてきたら、これほしい?と聞きます。
するとプロンプトなしでもイエスと答えられるようになりました。

−遊びでPECS−

 動作模倣とPECSを使って歌を歌います。

「幸せなら手をたたこう」
スマイルマークに手をたたく、足踏みをするなどの絵を用意して歌をうたいながら同じ動作をさせます。

 最初に動作模倣で訓練しておくともっとやりやすいですね。えっくんはその遊びをしたいとき、ちゃんと選曲することができます。最近は3曲とレパートリーがふえました。

−般化訓練−

 セラピーはいつもだいたい息子の部屋と家の前の公園でするのですが
般化させるために毎日セラピストさんがリビングルームに連れてきて絵をかかせたりパズルをしたりします。

 最初のころはセラピーが終わったと思っていた息子はパニックになりましたが、現在はまた自分の部屋に何事もなく入っていくようになりました。
現在でも一人にさせておくと自己刺激をして訳のわからない言葉を発しますが、長時間の介入でだいぶ変わってきています。
 

 

 

第1回 渡米そして療育

第2回 言語とコミュニケーション(PECS)